このCDは1973年4月のレニングラードフィルハーモニー大ホールのライブです.実はこの頃の録音はかなりあって,この演奏よりいいものもあります.しかし手に入りにくいのも事実なので,見つけたらという事です.
ベートーヴェンの4番と言えば,84年のクライバーのライブが非常にエポックメイキングな演奏で,私もそれまでベームの演奏で持っていた曲のイメージが全く変わったのを覚えています.しかしムラヴィンスキーが73年にすでにこの演奏をしていたとは.
一言で言ってしまえば,「北欧神話の巨人(3番と5番)に挟まれた女神(4番)」という是までの常識を覆す,「疾走する4番」なのですが,2人の音楽の質は全く違います.クライバーは言うなれば享楽的官能であるのに対し,ムラヴィンスキーの演奏はまるで宗教的官能とも言うべきか.
演奏に若干の失敗があるので,同じ頃の他の演奏が手に入るのであれば,そちらを薦めるが,聴いて損はない.
こちらはリヒテルのガーシュインという珍しい一枚.本などで有名なので知っている方も多いかもしれないが,彼は渡米した当時,いたくこの曲を気に入ったらしく.ここでも実に楽しそうな音を聞かせてくれる.
リヒテルの弾くアメリカ的なバタ臭い音楽もいいものだ.
最近ここに紹介したような,珍しい往事の録音がリリースされるのはうれしい限りだが,実は現代の演奏家に聴きたくなるような人がいないという事の裏返しでもある.
すこし寂しい気がする.

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