ショパン生誕200年の今年,様々な録音がリリースされている.その中で私の選んだ録音がこれ.1967年から1976年の10年間にモスクワ音楽院大ホールで行われたリサイタルのライブ録音から,ショパンの作品を集めた物です.
60年代から70年代と言えば,リヒテルの全盛期にあたる.加えてモスクワ音楽院大ホールといえば,あの61年の熱情を始め,輝くほどの名演が行われた彼のホーム・ホールである.リヒテルのショパンは好き嫌いはあるかもしれないが,この演奏を前に好きだの嫌いだのということは小さな事だ.
特に最後の2曲,ノクターンの19番とエチュードの4番は聴いている間,鳥肌が治まらなかった.厳しい緊張感と冷たい悲しみ,そしてもちろん信じがたいほどの技術.なんというのか,ダイナミックな豪放さと繊細なタッチが同居したピアニストを私は他に知らない.リヒテルの凄さを改めて実感してしまった.
エチュードの4番をあのスピードで,あの音圧で演奏できるのは,後にも先にもリヒテルぐらいなものではないか.
これが「ポーランドのショパンか」などという問いはもはやむなしいだけだ.聴き手はただリヒテルの伝える音楽を受け止めるだけしかない.
実は同じメロディア音源の1950年のライブがあったのだが,廃盤になってしまったようで,残念なことだ.

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