
Goldberg Variation / Karl Richter(1970)
バッハのチェンバロ演奏を聴く場合に,必ずしもカール・リヒターの演奏がベストとは思っていない.技巧的にもそれほど飛び抜けている訳ではなく,心を躍らせるような華やかさもない.学究的といえばそうだが,鈍重な感じがしないでもない.
ただ言えることは,バッハの音楽に対する真摯さにおいて,彼の右に出る者が無いほど,その態度が超絶していたということである.道を際めんと欲し続けた彼の人生が,聴く者をして感動せしめるのではなかろうか.
このCDは,以前紹介した1969年の日生劇場でのライブの翌年に録音されたもので,やや衰えが見え始めた頃といえる.この人らしく解釈や構成が年代によって大きくぶれることは無く,ここでも彼らしいしっかりした演奏を聴かせてくれる.
最初の録音はリピートの削除があったようだが,晩年はより楽譜の指定に忠実になった.演奏家が繰り返しを省くのは,演奏家の表現方法,あるいは解釈の披瀝として,当然あり得ることである.しかし先日暗澹たる気持ちにさせられたCDに出会った.
それは曽根麻矢子の2008年のavexにおける録音である.なんとライナー・ノートに,1枚のCDに納めるために,繰り返しをカットしたと書かれているのである.しかも,彼女自身は演奏していたのである.
残念なのは,前回の録音より遅いテンポで,しっとりとした良い演奏だったのだが,音楽を文化事業と思いもしない会社と契約したが為に,このような有様になってしまった.演奏は演奏者の物であって,レコード会社の物ではない.
このような恣意的な事が許されるなら,演奏者の独自性はどこに有るのだろうか.一時村治佳織も所属していたように思うが,幸い現在は旧Decca(現ユニバーサル)と契約しているのでよかった.
思うにAvexは美人の演奏家をマネキン程度にしか思っていないのだろう.このような真似をする会社にクラシックを扱って欲しくない.直ちに曽根氏は移籍するべきだ.演奏者としての矜恃を顕すために.

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