
The Last Recording / Horowitz
この録音はまさに死の直前に,彼の自宅で行われたものである.多くのミスタッチ,アンジュレーションとはいえない揺らぎ,遅れ.かつての華麗なテクニックも,煌びやかな音の響きもない.しかしかつて彼が身にまとっていなかった静寂と,シンプルな音の響きが胸を打つ.
それはこれが最後の録音であるという聞き手の思い込みだけではない.すべての虚飾を捨てた彼の生のままの姿がここにあるかのようなのだ.ピアノを,音を,そして自らの命を愛おしむように,静かにホロビッツはピアノを弾く.
おそらく死の予感はあったのだろう.稀代の,そして天性の「ピアノ弾き」の人生が静かに終わる.その瞬間が凝集し,一幅の絵画のように切り取られている.技巧偏重,楽譜偏重の日本のピアノ教育では決して生まれ得ない,異端の天才は最後の瞬間まで進化を止めなかった.
ところで,このCDはBlu-Spec CDという高品位CDなのだが,SHM-CDといいどうも一般的な家庭の再生環境で明らかに効果がわかるほどではない.Sonyには多少まずい再生環境でもあからさまに効果がわかるSuperAUDIO CDという技術があったのだが,どうやらSonyらしくあきらめたらしい.
私にはこういった企業文化の会社がビデオカメラにZeissのレンズを使っていたのが気にくわなかった.それこそ企業としての文化が180度違う.古くからのZeissファンとしては不愉快きわまりなかった.どうやらここに来てようやっとコンシューマー向けカメラにZeissを使うのをやめてくれたようだ.
長い歴史の中で,レンズの構成方法や,研磨方法,コーティング技術は変化しても,作成される映像の描写に微塵の揺らぎもないZeissのレンズは「家電屋のカメラ」にはあだたぬものであった.
話がそれたが,Blu-Spec CDが生き残る技術か,はなはだ疑問だということだ.

コメントする