
80年代の自転車のGeometryは,シートチューブがいまより寝ていました.チェーンステイが短くなり,シートチューブが立ったのは,実は中野浩一用に作られた自転車の影響です.彼の並外れた脚力と,下死点で完全に力を切り替えられる,ある意味特殊能力を最大限に生かすため,ゴール前のもがきで体の前傾を楽にすることが目的だったようです.
しかしチューブの材質や,機材の進歩によってその後,シート位置は下がったり前に出たりを何度か繰り返している.そして2009年モデルをみると,どうやらまた前輪加重がダッシュに向いているというのが,流行らしい.2008年モデルからレーシングモデルにヘッドチューブの角度が立っている車種が増え始めている.
前輪の中心がドロップの先端と同じか,少し内側に来るくらいに,フロントーベースが短くなっている.この方が上体の筋肉,とくに肩がつかえるというのだが,いまいちピンと来なかった.今日たまたま中野浩一の世界スプリント10連覇のドキュメントを見ていてなるほどと納得した.
あのゴール前の浩一ダッシュで彼は肘を張り肩を揺らす独特のポジションでもがいている.現在のロードレースではこれが顕著になり,自転車を左右に振るような乗り方になったが,この乗り方が肩を使っていることはわかりにくい.元祖の浩一ダッシュをみて初めて「肩を使う」意味がわかった.
身長が無いと,それでなくても前輪加重になりやすいが,それが最近の理論では「よい」ポジションと認識されるようになったようだ.もちろんフロントーベースが短くなり,ハンドルの拳の下に前輪の中心がくると,安定性は悪くなる.実際にコンフォート(快適)系の自転車はホイールベースが広くなっている.
つまり自分の目的を忘れて,ハイスペックに囚われると,乗りにくい自転車を買ってしまうことになります.もっとも高いものはレース向け,お値打ち機種はコンフォート系という日本の市場構造にかなり問題があると思いますが,2009年モデルにはハイスペックのコンフォート系も登場しているようです.

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