1978年バイロイトのタンホイザー

Sir Colin Davice / TANNHAUSER(1978)
以前LD資産をDVDにという記事で,同じコンテンツをLDからDVDにコピーする苦労を書いたが,ようやく正規にDVDとしてリリースされた.またしても代理店の力が強く,国際リリース版に日本語字幕は含まれていない.おまけに日本でのリリースは不明である.
おかげさまでタンホイザーは字幕なしでもほとんど台詞は覚えているので問題ないが,不信感はぬぐえない.それでもこの録画がDVD化されたのは,有り難い.1978年のバイロイト音楽祭で,こりん・デヴィスが指揮し,ゲッツ・フリードリヒが演出したタンホイザーは,総合的に評価の高い演奏だ.
なにしろ,クライバーのバラの騎士における元帥夫人でも,すばらしい歌と演技を見せたギネス・ジョーンズがヴェーヌスとエリザベートの2役を歌っている.オペラは基本的に音楽そのものと,歌がよければいいのだが,ジョーンズは演技も秀逸である.
元々映画フィルムで暗い劇場を撮影しているため,画質は望むべくもないが,LDよりはかなりましになっている.音質もDTS5.1chで聞くとずいぶん改善されているように思える.演出もとかく前衛や抽象に走りがちなバイロイトにおけるワーグナーの上演にしては,見やすく分かり易い.やはりタンホイザーの映像としては,お勧めの一本だと思う.
それにしても,この話の中で,純愛を貫くヴォルフラムが哀れでならない.第三幕では聖堂でタンホイザーの無事を祈りながら,瀕死のエリザベートを助け起こそうとしても,「あなたの助けはいらないわ,ほっといて」と,にべもなく断られてしまう.おまけに親友だったタンホイザーを堕落から救おうと努力しても,結局エリザベートの死によってタンホイザーは救われる.
まあ現実社会でももてそうもない「純愛野郎」のヴォルフラムが,気の毒になってしまいます.ただエリザベートの一途さは現実社会に置き換えるといささか眉唾で.むしろこうした一途さや,思い込みは最近は男性の方に多いようで.
ぼろぼろになったタンホイザーが巡礼から戻ったら,エリザベートは他の男と結婚していたという筋の方が現実感がありそうだ.それはともかく,歌の割り当てでもいささか割を食っているヴォルフラムの最後の一曲.「夕星の歌」はこのDVDでもなかな聞かせどころです.
コリン・デヴィスは交響曲などを振るとそれほど特徴的な演奏をする人ではないが,ここでは実にメリハリのあるすばらしい演奏をしている.



