米国は松坂をどう評価したか

日本人が知らない松坂メジャー革命
昨季のメジャーはファンにとって,いろいろな意味でストレスのたまるシーズンだったのではないだろうか.松井は夏だけ,イチローはあと一歩で首位打者を逃した.松坂はというと,もともと日本にいたときも好不調の波があり,負けそうで負けないというピッチングが多かったが,メジャーでは少しでも不調になると打たれるレベルが違う.
Wカップの松坂の快投や,甲子園時代の印象しかない日本の(大半の)松坂ファン(プロ野球ファンとは一致しない)人々は,「やはりダメか」というような印象だったのではないだろうか.1億ドルという大金が松坂個人に入ったわけではない事は,多くの人が知っている.
しかしそれでも球団が松坂獲得に1億ドルを払ったことには違いない.日米の多くの野球ファン,にわか松坂ファン,にわかMLBファンの注目は否応なしに高い.とはいえチームに対するスタンス,野球に対する思い入れ,野球というゲームに対する知識がかなり違う日米のファンのとらえ方はどう違ったのか.
この本はその疑問に一つの答えをもたらしてくれる.MLBのファン,特にボストンのような「特別」な球団の場合,チームはファンにとって「家族」なのである.松坂に対するある種の「期待はずれ」感は,現地ボストンのファンの方が大きいのだが,日本で「松坂は通用しない」というような報道がされたとき,地元のファンは「日本人は何を言っているんだ」と激怒したそうである.
彼らは外国からやってきて,「米国の流儀」に慣れることの難しさを肌で知っている.多くの市民が実際に移民であり,祖父母の代にさかのぼればその数はもっと多いだろう.結果が出ないことに対する責任は問うが,その努力を否定はしないという微妙な思い入れ.
そんなボストンの野球ファンの気持ちが微妙なタッチで表現された,おもしろい本である.日米の野球を文化論で語るような陳腐な論評でない事を付け加えておこう.選手個人において野球の違いは文化の違いなどではないのである.
「日本人が知らない松坂メジャー革命」
アンドリュー・ゴードン著
篠原一郎訳
朝日新書
ISBN978-4-02-273171-5