黄金のトランペット - デル・モナコ -

レオンカヴァッロ/道化師 (NHK)
昨年パヴァロッティの死去が大きく報じられた.奇しくもそのパヴァロッティがイタリアでデビューした1961年,日本ではデル・モナコのオペラ公演が行われていた.当時は引っ越し公演など思いもよらない時代で,数人の歌手と合唱団が来日し,NHK交響楽団と三期会などが演奏を行った.ずいぶんと評判を呼んだ公演だったようだ.
実はこの映像は私のオペラ体験における原体験と呼べるものだ.1982年にデル・モナコが死去したときに,NHKのニュース映像で,まさにこの映像で「衣装を着けろ」が放映された.美しいテノールの歌声と,苦悩の演技があいまって,肌が粟立つほどの感動を覚えた.
パヴァロッティの「衣装を着けろ」と比べると,デル・モナコの歌はよりエモーショナルなのに,表現にしつこさというか「濃さ」が無く,むしろ聴きやすく感じる.イタリアにおける評価も,声量も,モナコはそれほどではない.60年代はイタリア本土ではオペラがやや沈滞気味だったようで,このNHKの映像がLDで販売されると,イタリアでデル・モナコの再評価が行われたほどだ.
パヴァロッティは若い頃はともかく,米国に渡ってレヴァイン/メトロポリタンと公演するようになってからは,実にくどくて,脂ぎった歌になり,「おなかいっぱい」な感じがしてしまう.その点古くはあってもモナコは伊達者らしい切れの良さを持っていた.
こういった40年,50年以上も前の映像や録音を聴いて「大時代的」などと評価する人がいるが,これは的外れな評価と言わざるを得ない.そういう演奏が当時のスタイルなのだ.時代背景や時代考証を考えないで聴く人間にこういう演奏の良さは理解できないだろう.
マリア・カラスもそうだが,やはりオペラは「声」や「歌の上手さ」だけでは無い,「見た目の良さ」がものを言うと思う.このレオン・カヴァヴァッロの道化師は当時「黄金のトランペット」と評された,デル・モナコの美声を堪能できる,貴重な映像である.
レオンカヴァッロ/歌劇:「道化師」
NHKソフトウェア/キング・レコード
KIBM-1015