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裸足の1500マイル

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裸足の1500マイル

SilentNetwork起ち上げの頃,飼われているイルカが不幸かどうか,イルカに聞いてみないと判らないと言い張る女性がいた.何をどう説明しても,「野生でいること」のすばらしさ.生きる自由ととともに死ぬ自由もある「野生」でいなければならない事の重要性を判ってもらえなかった.二つの問題があるように思える.人の(この場合イルカの)立場で考えることが出来ていない事.つまり常に自分(人間)ならと言う一人称(人間中心,あるいは擬人化)の考え.そして生命の尊厳にたいする意識の希薄さだ.

かつてオーストラリアに入植したイギリス人は,白人との混血児を隔離し,英国風のしつけ,というと聞こえは良いがまるで動物の調教のような押しつけがましい教育を行った.それは「半分とは言え英国人の血が入った人間を,アボリジニのような野蛮人と同じにはできない」,という傲慢な考えから始まっている.

幼い姉妹がそのようにさらわれるのだが,姉は強靱な精神力と,荒野にに育った彼女ならではの知恵で追跡を振り切り,妹を背負って1500マイル(2400キロ)を歩いて故郷の村に帰る.唯それだけの物語である.しかし,この映画を見る者は,幼い少女がかくも偉大な人間になりうるという事実と,困難に負け支配されることに甘んじてしまう人間の弱さを目の当たりにすることになる.

この映画は所謂ジャーニー・ストーリーなのであるが,アボリジニ姉妹のお姉さんは最初から偉大なのである.その偉大な生命が自らの生命の尊厳を全うする,不屈の精神の賛歌が,心をうって止まない.公共の場で他人に迷惑を掛けないという最低限のマナーさえ忘れた「寝(い)汚い」日本人には足下にも及ばない,精神の崇高さを感じる.

大手の配給に懸からなかった映画だが,人間の尊厳を取り戻したいとお考えの向きにはお勧めの映画だ.英国式の食事も,きれいな服も,清潔なベッドも必要ない.同胞(はらから)の住まう故郷の荒野と泥で作った家が安住の地なのである.きっと現代の日本人の子供には理解できない事かも知れない.

映画のラストに,「野蛮」な英国人から逃れ,立派に成長したこの姉妹の実在のモデルが並んでほほえんでいる.

蛇足だが,オーストラリアではこの映画に豪アカデミー賞を贈っている.自虐史観だなどと見苦しいことを言い,責任を認めようとしない何処かの国民と,精神の清潔さに違いを感じる.

裸足の1500マイル(Rabbit Proof Fence)
ハピネット・ピクチャーズ

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