マーラー:交響曲第五番

Tennstedt/London Phil Barbirolli/New Philharmonia
「のだめ」ブームになって久しい.プロの楽団員達の間で火が付いたこのコミックの人気はやがて一般の人々に広がった.クラシック業界は低いレベルで安定した世界である.クラシック・ファン以外の人々に注目されるようなことがあると,業界のみならず,ファンもこぞってそれを後押しするような傾向がある.
こういう事でファンの裾野が広がることは歓迎すべきだろうが,いささか取り上げられている曲や演奏がマニアックなのが問題だ.私もマーラーについて聞かれ閉口している.このブログで何度か書いているように,私にはマーラーが理解できない.
何が判らないかと言えば,演奏に必要なオケ構成の巨大さ.そのためにだれが演奏しても微妙にズレが生じ,どうにも散漫な感じがしてしまう.マーラー好きに言わせると,その不協的な響きがまた良いらしいのだが.そのせいでズレを排除してしまったショルティの演奏は日本では受けが悪いらしい.
何を聴けばよいかと言われ判らないと応えるのも癪である.取り敢えずオケのドライビングが良く,判らないにしろ「巧く」演奏していて,かつ世界的に評価の安定している演奏を紹介したいと思う.後期の曲はさらに難敵なので,比較的分かり易く,映画「ヴェニスに死す」で第4楽章が使われて有名な5番を取り上げたい.
写真の左はテンシュテットがロンドン・フィルとの全曲録音の後,癌治療のためのリタイアを経て復活した際に行ったライブ録音である.実は全曲録音の後,1,5,6,7番をライブで録音し直しているのだが,大変緊張感のある演奏である.何かしらやり直したいところが有ったのかも知れない.
右はバルビローリの最後のマーラーである.1969年にこの録音を行った後,同じNew Philharmoniaとともに来日するはずだったのだが,突然逝去してしまった.こちらは如何にもバルビローリらしい,官能的な響きを聞かせてくれる.解釈としては古典的なのかも知れないが,私はこちらの方がマーラーらしさを感じる.
この2枚はEMIが2006年にリリースした「決定盤1300」という廉価盤シリーズに納められているのだが,同じ曲がひとつのシリーズに2曲取り上げられているのは非常に珍しいことだ.それだけ人気を二分する演奏だと言えるのだろう.