コルトレーン/至上の愛

John Coltrane / A Love Supreme
ここに来てCDショップの閉店が相次いでいる.CDシングルの売り上げがついにダウンロードに抜かれたらしい.またCDを買うにしても,万引き対策に悩むショップよりも,在庫の必要がないオンライン・ショップの方がビジネス・モデルとしても成立しやすいのだろう.しかしそれでは,書店の場合もそうだが,出会いがない.今日のこの一枚もそうだ.
最近SACDが盛り上がっている.1999年に発表されて以来,あまり普及しなかったが,これもPlayStation3の効果だろうか.家電量販店のYカメラは,音楽コンテンツ,特にクラシックとジャズに関しては驚くほどセンスのない品揃えをしている.おそらく専門的な知識を持った店員を置かないためか,売り上げを侮っているのか.私の知る限り,クラシック・ファンのCD購入枚数はかなり多いのだが.
そのような店で,SACDのコーナーが充実し,クラシックやジャズ,ロックの名盤がSACD化されるようになった.Blu-Ray Discなどは,フルHDのテレビを買わなくては見ても有り難みがないが,SACDに関してはある程度楽しめる.
かつて判ったふりをしてレコードで聴いていたこの曲も,SACDで聴いて改めて驚いた.この至上の愛に貫かれる「静寂」がそこにあるのだ.レコードでは消せなかった針が塩ビのディスクの溝をトレースするヒス・ノイズは,ここにはない.そして可聴帯域で20dBを超えるダイナミックレンジが再生する立体感のあるサウンド.まるでコルトレーンがそこに佇んでいるかのようだ.
たまたま立ち寄った店で,ふと眼について購入したのだが,PlayStation3を買って良かったと思わせるに足る収穫であった.1964年の録音とは思えない生々しい艶のあるサウンド,ベースの弦が軋む音のリアルさ,リードを流れる空気まで感じるようだ.こういう出会いは,ネット購入ではあり得ない.
SACDの実力を感じる一枚.今ならコルトレーンが判る...時間は若さを奪うばかりではない,こういう精神の熟成ももたらしてくれる.