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ヴァントのベートーヴェン全集がSACD化

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ベートーヴェン交響曲全集

音楽の記事が続いて恐縮である.しかし,たまたま今月は期待の新譜が重なった.このところ名演奏をSACD化する動きが静かに進んでいる.これもPlayStation3の賜だろうか.SACDの規格を保持しているSONYとしては思惑が当たったのだろうか?ゲームは不振だが.とにかく,以前先駆けてSACD化されたベルリン・フィルとのブルックナー選集以来の,SACD化である.

一部の保守的なオーディオ・ファンはアナログのLPに拘る割に,SACDを嫌ったりする.再現する周波数帯域がほぼ同じにもかかわらず.そう言った雑音に惑わされることなく,聞き込んでいると,SACDの良さが判ってきた.そして良さを引き出すコツも...

端的に言ってしまえば,SACDらしい音を楽しむには大音量がひつようだという事だ.従来のCDと同じくらいの大きさにしても音の解像度が高く,遠近感がハッキリするため,それ程大きく感じないのだ.従ってCDトラックを聴く場合より,大音響にすることが可能になる.そうすると非常に細かなニュアンスが聞こえてくる.

ヴァイオリンが,第一音を発する前に弓を持ち直す音まで一人一人聞き分けられるような感じだ.またSACDの再生はアンプやスピーカーの性能に大きく左右されるような気がする.

それはさておき,ベートーヴェンの全集である.実は元々のマスターが2chなので,残念ながらマルチチャンネルのトラックは無い(ブルックナーは元のマスターがマルチ).以前出ていたCDより音の透明感が増して,より臨場感がある.しかし,改めて感じたのは,ヴァントの冷静さである.

全く揺るぎの無いテンポで,ベートーヴェンの音楽が如何に激情を迸らせようと,ヴァントはアンジュレーションを与えるような事はない.純粋な音楽の形としては,理想的なのかも知れない.7番のようなリズムを追求したような曲では,その凄みが際だつ.

しかし,4番などはいかにも小曲といった感じがしてしまう.この感じはバックハウスのピアノとそっくりだ.9番では,第4楽章の合唱が始まるとなにか,それまでの冷静さが唐突に途切れる感じがする.つまり9番ではさすがのヴァントもベートーヴェンの音楽そのものが持つ激情に引きずり込まれているように感じられた.

やはり曲によっては,クライバーやフルトヴェングラーのような激情型の指揮者の方が良いようだ(私にとっては).冷静なヴァントだからこそ,ブルックナーが素晴らしいのだろうが.3番,5番,7番は素晴らしかった.

ちなみにヴァントはマーラーの音楽は「神の旋律とただの感情的な高揚が同居している」ので,「ブルックナーと同列に語ってはいけない」らしい.私にしてみれば,常にすべての楽器が鳴っているマーラーと,常に一部の楽器しか鳴っていないブルックナーは,どちらも始まりと終わりが見えないので好きになれないのだが...

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