環境ホルモンに対する誤解を助長する環境省
1998年に,環境省が発表したSpeed'98なる環境ホルモンに対する取り組みの発表は,樹脂業界に大混乱を招き,お定まりの日本の稚拙なマスコミの集団ヒステリーもこれを助長したため.問題の焦点が失われた.ところが2004年に,研究結果としての(実に簡単な)レポートが纏められたが,今度は「影響の所見無し」という事になり,またぞろマスコミの逆ヒステリーを引き起こしてしまった.つまり「環境ホルモンは空騒ぎであった」というのだが.
このレポートを読めば分かるように,この研究は,
1)物質単独
2)特定の濃度
3)一世代
に関して行われた物であり,内分泌攪乱作用が疑われる物質が,実際の環境において生物に作用する状況といささかかけ離れている.実際に米カリフォルニアでオスがメス化する問題が確認されたカエルの調査では,高濃度の農薬に曝されている上流部では確認されず.拡散して非常に濃度が低下した下流部でのみ確認されている.
これは非常に重大な問題なのだ,つまり「濃度で規制しても意味がない」と言うことだ.従来の化学物質汚染にたいする規制の根本的な方法論が揺らいでいるのだ.
様々な濃度で,複数の物質に,長期間曝された状態での,複数世代に亘る研究成果はまだ出ていない.さらに胎児,乳幼児,性徴期,成人といった成長段階での影響は研究されていない.ところが,この結果を発表したことで,こんどは環境ホルモン研究に対する予算は各研究施設で削られる事になってしまった.
1998の対策計画レポートでは樹脂狩りを惹起し,今度はその結果報告で環境ホルモン問題を葬ってしまう.環境省とは何のための役所なのだろう.
このような問題はダイオキシンについても引き起こされている.工場や焼却炉がやり玉に挙げられ,未だに必要な焼却炉が住民の反対で建設できないような状況が作られた.しかし実際に問題なのは「どういう焼却炉か」ということなのである.
新しい焼却炉の多くは非常に高温で焼却する事ができ,焼却時の排気もフィルターを通して処理されるため,ダイオキシンの環境中への放出は非常に少ない.寧ろ市民が庭先で行う「野焼き」の方がずっと危険だし,焼却炉の場合も,老朽化した古い施設を使い続ける方が余程危険なのだ.
更に言うなら,「自分の町で作らせず,隣町になったから安全」と思ったら大きな間違いだ.土壌の汚染が直接作用する量はわずかで,寧ろ水の循環によって,海洋,特に沈殿物における濃縮がもたらす海産物による大量摂取が問題なので,何処に作ろうが同じなのだ.
不思議なのは,Speed98のようなヒステリックな動きを見せるかと思うと,ナノ物質の利用や,食品への放射線照射,遺伝子操作食物に対しては,「使用の促進」を前提にしていることだ.環境中に存在しない物質を拡散させることは,「人間に影響が無ければ良い」という問題ではない.
これでは外来種の持ち込みに対する反省も何も活かされていない.ほんの小さな一つの歯車の狂いが,地球環境という繊細な仕組みに大きなダメージを与えることを,嫌と言うほど経験して尚,改善できないのだろうか.
業界の利益が利権に結びつくが故に...
コメント
環境省も困ったもんですね。
まぁ、これに限らずいろんな問題のところを見ると
今野の組織で適切に行政が対応するのは難しい
ということの証左なのかもしれませんが…
ちなみに、「環境ホルモン」ですが
まさに微量でもしっかり作用するという点が厄介で
それは、通常の内分泌物質(ホルモン)の特徴でもあるはずなんですがねぇ。
また、予防原則の発動に関しても色々と議論があって、「環境 安全という価値は…」という本などでも議論されていたりします。
ただ、困ったことに、なかなかこうした根本的なところからの議論ってされる機会がないんですよね…。
投稿者: ぶんてう | 2006年11月14日 00:34