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センス・オブ・ワンダー - レイチェル・カーソン -

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The Sense of Wonder(R.L.Carson)

レイチェル・カーソンと言えば,環境汚染による被害に対し,最初に警鐘を鳴らした,不朽の名著「沈黙の春」で有名であるが,この本は一歳八ヶ月の小さな甥(実際は姪の息子),ロジャーと過ごした海岸での思い出を書き記したものだ.Sense of Wonderとは,例えば幼い子供の「どうして,なんで」という問い,不思議に思う感受性とでも言えるだろうか.そして同時に,小さな子供の成長に眼を瞠る彼女自身の驚きでもある.

森や海辺をロジャーと散策しながら,彼の天真爛漫な疑問と驚きに,彼女の博識で応える問答によって描かれ,やがて甥の心に芽生える自然への共感を,新鮮な驚きとして優しく見つめる彼女の視線が語られている.

「沈黙の春」は決して最初から受け入れられた物ではなかった.多くの誹謗中傷を超えて,不屈の魂をもって人々に語り続けた果ての成果なのだ.その不屈の学者の面影はここにはない.しかし,共通する自然への愛情と,その自然を必ず人間は守ることができると信じる気持ちがある.

今の日本において,子供達への教育で欠けてしまった多くの問題への答えがこの本の中に見つけられるだろう.日本の学者,役所,マスコミは何もないことを前提に話を始めずには居られない.一時あれほど騒がれた環境ホルモンの問題も,環境省の「短期的な結果が得られない」という所見で,忘れ去られた.

実際には単独の物質が大型哺乳類に短期的(一世代のみの単体)に直接的な傷害をもたらさなかったというだけの事で,複合的な被曝や,中長期的な世代を跨る影響については全く確認されていない.にも拘わらず,週刊誌などには環境ホルモン騒ぎは「茶番」だなどという記事が載ってしまう.あまつさえ,厚生労働省などの規制も緩んでしまった.

一連の問題は,まさにSense of Wonderの欠如に他ならないではないか.思慮が浅くなってしまった大人達にこそ,読んで欲しい本なのだが.

私の大好きな一説を子供達に送りたい.「自然のいちばん繊細な手仕事は,ちいさなもののなかに見られます」.今ではマクロレンズという文明の利器がある.カメラを持って自然の中に出掛けよう.小さな自然の中に大きな驚きが待っているだろう.

レイチェル・カーソン著
上遠恵子訳
新潮社刊 「センス・オブ・ワンダー」
ISBN4-10-519702-9

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