Die Zauber Flote - 魔笛 -

サバリッシュの魔笛DVD(UCBG-1161)
懐具合の悪いときに限って,というのは以前にも言ったような気がするが,やはりこれは真実らしい.かねてからLDで持っていたのだが,DVDにコピーしたものか,考えあぐねていたのが,ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮,バイエルン国立歌劇場による,「魔笛」である.なにしろソリストはオールスターで,夜の女王はグルベローヴァ,パミーナはルチア・ポップ,ザラストロはクルト・モルである.
初めて聞いた夜の女王がグルベローヴァだったのは,全くの偶然なのだが,ここで聞かせる"復讐の炎"のアリアは実にすばらしい.聴いていて澱むところは全くなく,一体いつ呼吸をしているのか判らない.頭の中で思い描く通りに歌いきってくれるのだ.
魔笛というオペラは,実に妙なテキストに基づいているため,途中で脚本が改編されたという通説が罷り通っている.単に主人公に定見が無く,心変わりをしたと見ることも出来るのだが,女性の味方だったのが,女性蔑視の教団に改宗してしまうダイナミックさはやはり不自然な感じがする.何度聞いても教団の領袖であるザラストロの理論は私には理解できない.
モーツアルトがフリーメイソンに加入したためだなどというが,それも疑問だ.だとすれば,その教義をもっと正当化するはずであるが,それにしては生を謳歌し,女性へのあこがれを歌うパパゲーノの重さが際だっている.本心は此方だと言わんばかりである.やはり単に脚本がダメなだけではなかろうか.
しかも,後半は音楽的にも間延びした部分が多く,些かうんざりしてしまうのだ.このオペラの醍醐味は筋立てやドラマ部には無く,ちりばめられたアリアのすばらしさにあるのだ.聴いたことのない人でも,通して聴いてみると,実はよくご存じの旋律に満ちあふれていることだろう.
ただ不思議なことに,脚本上の主人公であると思われるパミーナとタミーノには,すばらしいアリアが無い.ところが夜の女王,鳥打ちのパパゲーノ,ザラストロには名曲が用意されているのだ.やはり人間らしい生き方を讃えているとしか思えない.

1997年のチケット
私が魔笛を実際に鑑賞したのは1997年のベルリン国立歌劇場の公演で,指揮はダニエル・バレンボイムであった.夜の女王はカメリア・ステファネスクという若い歌手で,まあまあ歌えていたように記憶している.

アーノンクール盤(TELDEC)
CDで鑑賞する場合様々な名演のCDがあるが,グルベローヴァが夜の女王を歌っているのが,アーノンクールの録音だ.彼らしいいささか先鋭的な演奏だが,好みは別れるところだろう.DVDの4年後の録音だが,グルベローヴァの歌は些かDVDより切れが悪いように感じる.グルベローヴァの名を不動にした,1970年にウィーン国立歌劇場で夜の女王を歌った録音が有るのか,確認できていない.