The Goldberg Variations - from Glenn Gould plays Bach
The Goldberg Variations - from Glenn Gould plays Bach(DVD/SONY BMG)
散々待たされたDVDが漸く入荷してきた.The Alchemist(1974)を見た後で,この映像を見るとあまりの変わりように痛々しく感じる.この映像は1981年なので,7年しか経過していないが,随分歳をとって見えるし,なにしろ太っている.そして歳月を感じるのは,彼の「家族」もしくは「パパの椅子」が,随分と痛んでいることだ.
画質は酷い物だ.髪などはディーテイルが失われかつらでも被っているようだ.しかし,そのような些末のことはこの映像の価値を些かも失わしめるものでは無い.彼の畢生の名作であるGoldbergのまさに録音したその年の映像なのだから.
The Alchemistをみれば判るとおり,彼は1パッセージ毎にTakeを換え,言わば切り貼りで作品を仕上げている.それは彼が音楽の再現芸術としての面より,音楽そのものの「質」に拘った結果だと言える.もちろんリヒテルの様に一期一会である,リサイタルに賭けるのもすばらしいが,これは較べるような次元の物ではない.
グールドの音楽表現は,こういう風に作品を仕上げる事で,完成するのであるから.
私が改めて聴いた限りでは,どうも現在CDで発売されている録音(作品)と同じものを音楽トラックに使っているように思われるが,詳細は知らない.先に述べたような作り方なので,映像と音楽を合わせるのはさぞ大変な作業だったろうと想像される.
冒頭のグールドの略歴の紹介や短いインタビューは蛇足の感じがする.むしろ純粋に音楽ビデオとして,演奏のみを納めても良かったかもしれない.それにしても厚めのワイシャツを2枚重ねで着て,まるでブレンデルの様な牛乳瓶の底のような眼鏡.伊達者のグールドとは思えない.(髪の毛のディーティルが消えているのは禿げているのを隠すためだという説もある)
製作はThe Alchemistと同じ,Bruno Monsaingeonである.所々に意味不明のカットが有るのが気になる.特に最後のアリアで,長々とマイクだけを撮したカットなどは殆ど無意味である.なにか編集作業において,その部分で使えるTakeが無かったのかもしれない.
ただ先にも述べたように,この映像の価値はそのような物で,下がることは無い.バッハ演奏の一つの金字塔がここにはある.映像として残っているのだ.
ただThe Alchemistのパルティータ6番の方が,グールドの見た目にも判る充実度,精神的な安定,カメラワークなど,様々な面で,完成度は上かもしれない.しかし,「あの」Goldbergの演奏の様子なので,やはり比較に意味はないが.