椿三十郞をリメイク?
黒沢/三船の椿三十郞
黒澤明と三船敏郎のコンビによる,チャンバラ映画の一つの到達点がこの映画である.先日角川映画がこの椿三十郞をリメイクするという発表があった.角川というだけで些かうんざりという感じだが,ナント主演は織田裕二だと云う.あの台詞が一本調子の,国際陸上で興奮しながら間抜けなコメントを語る.演劇や映画の評価というものは所詮主観によるものでしかない.
しかし,日本映画の不幸は,「オトナ」の俳優が居ないことだ.年齢の問題ではない.演技,存在感,知性,品性全てを含む役者として「オトナ」が居ないのだ.NHKの大河ドラマでも,呂律の回らないアイドル俳優や首が据わっていない「コドモ」の様な俳優が主役をやったり.
もっとも以前から海外では,日本の映画はケン.オガタとケン・タカクラが交互に主役をやっていると言われた.それでも現在よりはマシだろう.大河ドラマの例で云うと,「国盗り物語」,「花神」あたりの出演者と較べると,現在は随分薄っぺらになっている.当時の役者も今は歳をとってしまった.
椿三十郞の白眉はなんと言っても,ラストの対決で,三船が映画史上最速の抜き打ちを見せた場面である(もちろんこの作品の良さの一要素に過ぎないが).以前ビートたけしが,「座頭市」を撮る前の映画の対談で,この場面に言及し,「オレだったら刀の柄を押しつけて抜けないようにするなぁ」と言っていた.
そのシーンは後に「座頭市」の飲み屋でのシーンで実現している.
しかし,このラストでそれはないだろうというのが,正直な感想だ.人間的な葛藤の末の決闘で,そのような小細工で決着が付いたのでは後味が悪い.その辺が彼の映画がシリアスな作品でもバラエティーっぽさから抜けきれない原因ではなかろうか.
チャンバラと言えばマキノ雅弘だが,黒澤はこの作品で黒澤流のチャンバラの完成型を作っていると思う.日本のチャンバラ映画を何本か選ぶときに必ず入れなければならない一本である.出来れば無用なリメイクは止めてもらいたいものだ.