レゲエの神の物語 - Bob Marley -

Legend DVD盤(Island)
私のCDコレクションにおいて,Completeしているアーティストが何組か有る.1つはもちろん,私がレコードというメディアによって音楽を聴き始めたそのきっかけであり,大きな影響を受けたThe Beatlesである.もう1つ,ビートルズ以降でもっとも強いインプレッションを受けた,Led Zeppelin.そして一人のアーティストとしては,ピアニストのリヒテルに匹敵する程に,敬愛してやまないBob Marleyである.
もちろんCompleteと言うのは,生前に本人達の意志で発売された正規盤のみで,企画盤は含まない.しかし,Bob Marleyに関しては,企画盤を含めてもCompleteに近い状態である.
「何が好きなのか」と言えば,その音楽も,声も,生き方も,そしてまるで物語のような彼の人生そのものが好きでたまらない.
ラスタファリ.これはジャマイカの民間信仰にある,アフリカの王がやがてアフリカと,アフリカから連れてこられた人々の全てを統一するという物語が,エチオピア皇帝ハイレ・セラシエにおいて実現すると考えるムーブメント,およびそれを信じる人を示す言葉である.セラシエの本名ラスタ・ファリ・マコネンに由来する.
ラスタファリへの傾倒は,Bob Marleyにとって諸刃の剣であった.それは,オノ・ヨーコと結婚したJohn Lennonへの評価に極めて似ている.妻リタ・マーリィーによって,ラスタファリズムに染まった彼は,伝道師となり,様々な機会において,ラスタファリズムについて説くようになる.
ただ,その間も彼の歌は淡々と民衆の苦しみや,貧困にあえぐ生活を,淡々と明るく前向きに歌っている.押しつけがましさは微塵もなく,暗さはその影を射す事もない.声の限りに訴えるのでもなく.前向きに生きろと彼は云う.
Get up Stand up.
Don't give up the fight.
私には何もない,有るのは権利だけだ.
生きること,それは戦いだ.
貧しいジャマイカにおいて,白人との混血であるがために,無視され仲間に入れてもらえなかった少年時代.父親の農場と全てを捨てて街へ出た彼は,どん底の生活にあえぐ民衆と音楽(レゲエ)を見つけた.やがて貧困の救済を求める魂のエヴァンゲリストとして大衆の支持を得たが,売れたことでまた嫉妬や誹謗中傷に曝されることになる.
ラスタファリズムへの傾倒により,政府周辺からも警戒された彼は,肉親を捨ててまで選んだ祖国ジャマイカから追われ,ヨーロッパに渡る事になる.それでも彼は祖国や,民衆を非難することはなかった.ただ彼の詩にささやかな愛情や,幸せを願うものが多くなった.しかし,込められた願いに変化は無かった.彼自身もそう証言している.
あまりにも有名なNo Woman No Cryや,Is this Love?は一見して抵抗の歌ですらない.その辺の機微は,このDVDに収録されている,長編ドキュメンタリーで,Bob Marley自信の言葉で聞いてもらいたいものだ.
ところで,I Shot the Sheriff.は,クラプトンの曲だと思っている人が多いのではないだろうか?
おっとConcrete Jungleも忘れてはいけない.