バッハ演奏の歴史的名演がDVD化
Richterのバッハ三部作がDVDに
カール・リヒターといえば,20世紀のバッハ演奏において,一つのテーゼ示した演奏家として名高い.特にバッハのマタイ受難曲,ミサ曲ロ短調においては他の追随を許さない名演中の名演として名高い.切れのある,血を吐くような「祈り」を感じさせるすばらしい演奏が残されたことは,誠に人類の遺産とも言える宝である.ちなみにバッハの宗教曲三部作とは,マタイ受難曲,ミサ曲ロ短調,ヨハネ受難曲である.
趣味は人それぞれだが,マタイなどはカラヤンの残した録音と聞き比べてもらいたい.いったい何をどう間違えるとあんなに甘ったるいバッハを思いつくのだろう.何しろ大編成のオケ,大編成の合唱でこれでもかと押しつけられるのは,どうにもいただけない.
もちろんリヒターがすべて良い訳ではなく,日本ではマタイの録音は3種が発売されている.内ひとつは日本公演のライブ録音で,これは別の意味と価値があるので,数えないとしても,50年代の演奏と,70年代の演奏ではやや趣が異なる.60年代,70年代と時代が下るにつれて,リヒターの解釈はやや重たくなり,商業的な録音という感じが否めないものも出てくる.
このたび発売されるマタイのDVDは71年の録音で,59年,79年の2つの録音のほぼ中間に位置している(日本でのライブ録音は69年).演奏は58年の物と比べるとやや劣るが,よくも映像が残っていたものだ.貴重な映像なので,バッハの宗教曲がお好きな方にはぜひともおすすめしたいDVDだ.ちなみに今回三部作の他に,ブランデンブルクとオムニバス物も含め5点が発売になっている.(写真はミサ曲ロ短調:マタイ受難曲は2/17発売)
但し,これらはインターナショナル版で,英語,ドイツ語,フランス語,スペイン語,中国語の字幕はあるが,日本語字幕はない.良くこういった物が多いが,いったい何故インターナショナル版に日本語字幕が無いのか,おそらくは旧態依然たる日本の音楽市場の複雑怪奇な流通形態や,販売店の利権の問題なのだろう.世界でもっともクラシックファンが多いといわれる日本で,なんとも不思議なことだ.もしかすると,後になって日本独自版が出るのかもしれないが,ばかばかしい話だ.
CDのコピーコントロールにしても,こういった販売体制の問題にしても,日本は世界の標準からはずれようとしている.ますますCDやDVDを買う人を遠ざけているのではないか?