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Diva(ディーヴァ)と呼ぶなかれ

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Invitation to Maria Callas(EMI)

クラシックから生まれた言葉が,普通の生活の中で転用して使われることはしばしばある.この言葉もそうだ.セリーヌ・ディオンなどもディーヴァと呼ばれたりする.確かに歌は旨いかもしれないが,この称号は,20世紀においては,ただ一人の歌手を示すと言っても過言ではない.

ディーヴァとは言葉の文字通りの意味は「歌姫」である.しかし,この言葉が象徴するただ一人の歌手はマリア・カラスその人である.もちろん他にも上手な歌手はいる.例えばエディタ・グルベローヴァなどは,恐らく最高のソプラノ(コロラトゥーラ)の一人で,あの魔笛の「夜の女王」は圧巻である.カラスのどちらかと言えば堅い声質とは違い,コロラトゥーラ独特のコロコロと鈴を転がすような高音においても,艶と張りのある声で,技術的にはむしろ上かもしれない.

しかし,グルベローヴァは「ディーヴァ」とは呼ばれない.ディーヴァの称号はにはいくつかの条件があると言えよう.それはドラマティック・ソプラノであると言うこと.イタリア・オペラを歌うこと.ドラマティック・ソプラノ(ドラマティコ)というのは,声域などで呼ばれるのではなく,舞台映えのする美貌の持ち主で,且つ演技派であるという事らしい.その点では,まさにカラスはそれに相応しかった.

クラシック専用の用語ではないが,最近あったのは「クール・ビューティ」であろうか.荒川静香がオリンピックでプッチーニのトゥーランドットを使ったので,NHKのアナウンサーがそう呼んだのだが,一般の方には判りづらかったようだ.クール・ビューティというのは文字通り「笑わない美女」のことだ,言い換えれば残酷な美女と言うこともできる.

トゥーランドットというお姫様は,結婚を申し込む他国の王子に無理難題を出して,果たせなければ殺してしまうという恐ろしい姫君で,最後は愛を受け入れる.日本のかぐや姫も「クール・ビューティ」の一人であろう.NHKのアナは,荒川静香をトゥーランドットになぞらえて呼んだのだろうが,その辺を知らない人は,何を言っているのか判らなかったのではないだろうか.

ソプラノの話ついでに,難曲の話をしよう.ソプラノの難曲と言えば,先ほども出てきたモーツァルトのオペラ「魔笛」に出てくる,「夜の女王のアリア」や,同じく夜の女王の「復讐の心は地獄の炎のように」が有名である.しかしソプラノ歌手によると,K.316 アリア「テッサリーアの民よ,<私は求めはしません,不滅の神々よ>」が難曲中の難曲とされている.

この曲は殆どCDも出ていない.生で聴くこともない.グルベローヴァでさえ,「モーツァルト,コンサートアリア集」の中で取り上げていない.何しろモーツァルトのアリア中最高音が出てくるだけでなく,高音域での音の移動が続くのだ.NHKの毎日モーツァルトで取り上げられていて,久しぶりに聴いたが,私が唯一聴いたことのある音源だった.惜しむらくは曲そのものが印象的なものでは無いことか.

そういえば,機械の動きの一定区間を「タクト」と呼ぶが,これはドイツ語の「taktstock」(指揮棒)から,tact time (正確にはtakt time)を略して呼ぶようになったらしい.

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